沈黙が、重くのしかかる。数秒が、永遠にも感じられた。カフェのBGMが、遠くで小さく流れているのが聞こえる。他の客の話し声も、耳には入ってこない。ただ、彼女の、そして俺の、心臓の音が、やけに大きく聞こえるだけだった。 やがて、彼女の細い指が、ゆっくりと俺の腕に絡みつくのを感じた。その瞬間、俺の全身に、甘く痺れるような感覚が走った。彼女の指が、俺の腕を、そっと撫でる。まるで、俺の存在を確かめるかのように。 「…大地くん…」 彼女の声が、震えながらも、俺の耳に届いた。その声には、先ほどの戸惑いとは違う、何か、諦 ...