ひゅう、と風が唸る音がした。日付が変わってからとうに二時間は過ぎている。深夜二時。俺の部屋は、どこか空虚な匂いがした。広すぎるワンルームに、積み上げられた会計書類と、冷え切ったコーヒーのマグカップ。公認会計士として、ただひたすらに数字と向き合う日々。デスクに突っ伏した俺の指先が、キーボードの冷たい感触を捉えていた。カチ、カチ……。乾いた音だけが、やけに耳につく。 ふと、顔を上げた。窓の外は、真っ暗な東京の空。きらめくネオンは、この部屋の、俺の孤独とはまるで無縁の世界だ。何かが、足りない。常に目標を追いかけ ...