【軌跡】

甘く疼く傷痕 その3

その日から、俺の新しい生活が始まった。

学校が終わると、俺はまっすぐバーに向かった。

掃除、グラス磨き、仕込みの手伝い。
慣れない作業だったが、マスターたちは丁寧に教えてくれた。

バーの人たちは皆、優しかった。

俺の事情を察しても深くは踏み込まず、
一人の人間として接してくれた。

ここにいる時間は、あの家での恐怖から解放される唯一の救いだった。

少しずつ貯まっていくお金は、
街を出るための希望そのものだった。

マスターからは接客の真髄も学んだ。

「人の話を聞き、その心を軽くしてあげられる人間になりたい」――

そう願う俺を、マスターは
「それは素晴らしい目標だ」と笑って応援してくれた。

彼との出会いは、暗闇に差し込んだ一条の光だった。

しかし、一歩家に戻れば、そこは相変わらずの地獄だった。

ある週末の夜、親父が不在の隙を突き、
三人が俺の部屋の前に現れた。

「修太ー、いるんでしょー?」

継母の声に続いて、ガチャガチャと鍵をいじる音がする。

予備の鍵を使われたのか、
ついに扉が開かれた。

そこには、歪んだ欲望を隠そうともしない三人が立っていた。

「逃がさないよ、修太」

「たっぷり可愛がってあげる」

逃げ場を塞がれ、俺はベッドに押し倒された。

抗う力も虚しく、彼女たちの冷酷な手が
俺の衣服を剥ぎ取っていく。

「ふふ、相変わらずいい体してるわね」

継母が俺の全身を品定めするように見つめ、執拗な接触を始めた。

嫌悪感と恐怖で震える俺の意思とは裏腹に、本能的な感覚だけが熱を帯びていく。
それが、何よりも惨めで悔しかった。

彼女たちは代わる代わる俺を翻弄した。

継母の熟練した手つき、未菜の強引な誘い、そして香菜の激しい衝動。

三人の欲望に晒され、俺の感覚は麻痺していった。

「もっと激しくしてよ」

「私の中でもっと暴れて」

投げかけられる淫らな言葉の数々に、
俺の理性は粉々に砕かれた。

身体の芯から突き上げる衝動を無理やり引き出され、
俺はただ、彼女たちの欲望を満たすための「道具」として扱われ続けた。

身体が疲れ果て、反応が鈍くなると、
継母はどこからか取り出した小さな錠剤を俺の口に放り込んだ。

「これでまだ楽しめるわね」

直後、激しい鼓動とともに、意識とは無関係に身体の熱が再燃する。

逃げ場のない快楽の強制。

夜が明けるまで、俺は三人の果てしない欲望を受け入れ、心身ともに削り取られていった。

その日以来、俺は完全に彼女たちの「玩具」に成り下がった。

日常的に部屋へ踏み込まれ、拒む術も許されない。
抵抗すればさらに執拗な仕打ちが待っている。

親父は酒と女に明け暮れ、世間も助けてはくれない。

ただ、バーでのアルバイトだけが、俺をつなぎ止めていた。

高校進学の時期が近づき、
俺はマスターの店の倉庫の一角を借りて必死に勉強した。

(ここから逃げる。この地獄を終わらせるんだ……)

眠気と倦怠感に襲われながらも、
俺は泥沼の中から必死に手を伸ばし、
未来という名の希望を掴もうとしていた・・・。

遠方の高校を目指した受験の日。

緊張よりも、この地獄から抜け出せるという希望で胸がいっぱいだった。

だが、結果は不合格。
絶望が俺を襲った。

親父からは罵倒され、女たちはどこか面白がるような視線を向けてくる。
結局、地元の高校へ進むことになったが、俺は諦めなかった。

次は県外の大学だ。
そのために、俺はバーでの仕事を続け、
牙を研ぎ続けた。

高校生活は、家とバーを往復する日々だった。

バーでの接客は、人の心の機微を読み取り、信頼を勝ち取るための訓練の場となった。
一方で、身体の鍛錬も欠かさなかった。

もう、されるがままの無力な少年ではない。

いつか、この力で彼女たちを屈服させてやる。
その暗い決意が俺を突き動かしていた。

彼女たちに「可愛がられる」時間は、
俺にとって生々しい教材となった。

彼女たちの指先がどこを求め、どんな言葉で理性を失うのか?
俺は苦痛と屈辱の中で、冷静にその反応を分析し続けた。

ある夜、親父が不在の隙に未菜が部屋へ入ってきた。

彼女は慣れた手つきで俺を翻弄し、支配的な悦びに浸っている。
だが俺は、彼女が特定の刺激に弱く、あっという間に自制心を失う様を冷徹に見つめていた。

彼女の衝動が頂点に達し、
俺の身体から熱い塊が奪い取られる瞬間、俺は彼女の脆さを確信した。

また別の夜には香菜が現れた。

彼女は剥き出しの欲望のままに俺を貪る。

執拗な接触と、逃げ場のない熱気。

彼女は俺の奥深くまでを支配しようとするが、
その過程で彼女自身がどれほど容易に理性を手放すかを、俺は肌で理解した。

そして継母。
彼女のやり方はより洗練され、精神的な屈辱を伴うものだった。

俺を意のままに操ることを楽しむ彼女に対し、俺は従順さを装いながら、
彼女が「力を誇示されること」でしか満たされない歪んだ本質を見抜いた。

高校の三年間、俺は三人の女たちから、
人間の脆弱さと衝動の制御方法を学び取った。

それは俺が目指す「支配」のための、呪われた知識となった。

彼女たちに翻弄されるたび、俺の心には、
いつか立場を逆転させてやるという
氷のような決意が固まっていった。

迎えた大学受験。

結果は合格。奨学金も確保し、ついにこの家を出るための切符を手に入れた。

引っ越しの当日、親父も女たちも俺に声をかけることはなかった。

俺は誰にも見送られることなく、静かにあの家を後にした。

後ろは振り返らなかった。あそこにはもう、俺の居場所などない。

心に刻まれた傷痕は消えない。

一人になると、あの夜の感触がフラッシュバックし、忌まわしい記憶が俺を苛む。

だが、俺はもう無力ではない。
自分の力で地獄を抜け出し、新たな人生を歩み始めたのだ。

女性を支配したいという衝動。

それは復讐であり、生きるための手段でもある。

いつかこの歪んだ力が、誰かの絶望を照らす光になるのか、
それともさらなる破滅を呼ぶのかは分からない。

ただ、新しい大学生活で出会った一人の女性が、
俺の運命を再び狂わせていくことになる。

俺はまだ、本当の絶望を知らなかったのだ。

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