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濡れた指先、繋がった未来

都内のベンチャー企業に勤める若手システムエンジニア、健介は29歳。

見た目は典型的なオタク系で、学生時代に一人だけ交際経験があるものの、いまだ真実の愛を知らなかった。周囲の同級生たちが次々と人生の伴侶を見つける現実に、内心の焦りは募る一方だ。趣味はゲームとプログラミングコードを書くこと。女性に対しては、とにかく奥手だった。

一方、宏美は40歳。中堅IT企業でキャリアを築いてきたバリバリのキャリアウーマンだ。見た目は美人だが、サバサバとした性格が災いしてか、男性人気は今一つ。結婚は半ば諦めていたが、最近ふと感じる時の流れと、漠然とした未来への孤独感に不安を覚え始めていた。趣味はお酒とエステ。そして意外にも、大の子供好きだった。

同級生の結婚ラッシュに焦りを感じた健介は、会社のイケメン同僚に勧められ、意を決して出会いの場に登録してみた。しかし、結果は惨敗。プロフィールに「いいね」はほとんどつかず、メッセージを送っても返信はない。画面の中の華やかな世界は、健介にとってはただの遠い幻だった。

同時期、宏美もまた、出会いを求めて新たな一歩を踏み出していた。何度か男性と実際に会ってみるものの、二度目の機会に繋がることはない。

「会社では男勝りの性格が広まってるから、みんな敬遠するのかしら」

自嘲気味にそう考えながらも、宏美は諦めきれずに新たな出会いの場を探し続けた。

そんな二人が、思いがけない形で現実の世界で出会う。会社のプロジェクトで、健介と宏美は同じチームになったのだ。

初めて顔を合わせた時、健介は宏美を見て「きれいな人だ」と密かに憧れを抱いた。しかし宏美は、健介を「頼りない男」と内心見下していた。

彼の控えめな外見と、会議中もどこか自信なさげな態度が、宏美の目にそう映ったのだ。

プロジェクトは順調に進んでいるかに見えた。だが、ある日、宏美の致命的なミスによって、苦労して書き上げたプログラムコードが全て消えてしまうという事態が発生する。血の気が引いた宏美は、どうしていいか分からず立ち尽くした。その時、健介が黙ってPCに向かい、徹夜で消えたコードを書き直したのだ。

朝、完成したプログラムコードを見た宏美は、健介の技術力と、何も言わずに助けてくれた優しさに触れ、彼を見直した。

数日後、宏美は偶然、オンラインのプロフィールで健介のページを見つける。彼の冴えないプロフィール写真に、思わず苦笑が漏れた。同時に、先日のお礼をきちんとしていないことを思い出した宏美は、メッセージ機能を使って健介に連絡を取り、食事に誘った。

後日、二人は会社の近くの焼き鳥屋で食事をすることになった。普段はあまりお酒を飲まない宏美だが、その日は珍しく深酒をしてしまった。健介は泥酔して歩けなくなった宏美を、心配そうに支えながら自宅まで送り届けた。

マンションの前で別れ際に、宏美は酔った勢いもあってか、胸の内にある悩みを健介にぽろぽろと漏らした。

「私って、やっぱり魅力ないのかな…」

俯く宏美に、健介は慌てて

「そんなことないですよ!宏美さん、美人なのに…おかしいですよ!」

と一生懸命励ました。

健介の真っ直ぐな言葉に、宏美の心に何かが弾けた。

「だったら…私の相手ができるの?」

宏美は酔いの回った瞳で健介を見上げ、挑発するようにそう問いかけた。真実の愛を知らない健介は、突然の宏美からの誘いにひどく動揺した。しかし、憧れの宏美からの誘いを断ることはできなかった。

宏美の部屋で、二人はぎこちなく服を脱いだ。

経験の少ない健介は、どうしていいか分からず、ただ目の前の宏美の体に戸惑うばかりだった。宏美はそんな健介を優しくリードしようとした。しかし、健介の動きはぎこちなく、緊張しているのが丸わかりだった。

そして、求め合った時、健介は心の準備もできず、ただただ熱を帯びた衝動に突き動かされた。焦りと興奮が入り混じり、健介の体は硬直した。

「ごめんなさい…」

蚊の鳴くような声で謝りながら、健介の体はぴくぴくと震え始めた。そして、抗いがたい快感が全身を駆け巡った。初めての経験、彼の熱い感情が宏美の中に、勢いよく、大量に解き放たれたのだ。

熱い波が……!!!

「あぁ…あああ…ッ…!中で…温かい…アアッ…」

宏美の声が、高揚に満ちて響く。

予期せぬ感情の噴出だった。初めての強烈な感覚と、女性の体内に自分の全てをぶちまけるという背徳感にも似た興奮が、健介の理性を吹き飛ばした。一度火がついた健介は、その後まるで何かに憑かれたかのように、宏美と肌を重ね続けた。そして、その度ごとに、彼の熱い感情を宏美の中に幾度も注ぎ込んでしまった。

翌朝、宏美が目を覚ますと、隣には裸で眠る健介がいた。昨夜の出来事がフラッシュバックし、宏美は顔を赤らめた。静かに健介を起こし、昨夜の状況を確認する。健介は申し訳なさそうに俯いていた。

宏美は意を決して健介に切り出した。

「どれだけ…? 中は…もう、大変なことに…。ここまでしてくれたんだから、責任、取ってくれるわよね…?」

健介は一瞬戸惑ったが、すぐに顔を上げ、真剣な眼差しで宏美を見つめた。

「はい!責任、取ります!あの、宏美さん!出会った時からずっと好きでした!もしよかったら…結婚を前提に、僕とお付き合いしてください!」

宏美は内心嬉しかった。未来への孤独に対する不安が、少しだけ和らいだ気がした。しかし、素直になれないのが宏美だ。

「私は昨日、酔ってて全く覚えていないから、今から私が納得するまで相手しなさい!」

宏美はそう言って、健介に再び情熱を求めた。

「はい!喜んで!!」

健介は突然の宏美の言葉に目を丸くしたが、すぐに嬉しそうな悲鳴を上げ、宏美に覆いかぶさった。その日一日、二人は宏美の部屋で、ひたすら互いの体を求め合った。宏美は、健介の心を射止めた優越感と、彼に求められる快感に酔いしれた。健介は、憧れの宏美と結ばれた幸福感と、愛する喜びと官能に溺れた。

その後、二人は付き合うことになった。子供が欲しいという気持ちが強かった宏美は、健介と愛し合う度に、その体の中に自分の全てを受け止めることを望んだ。健介は宏美の願いを疑うことなく従い、毎夜のように宏美の体内に自身の全てを注ぎ込んだ。

一年後、宏美の妊娠が発覚。宏美は会社を産休に入り、同時に二人は結婚した。今は可愛い女の子が生まれ、二人はささやかな幸せを噛み締めながら暮らしている。

健介のオタク系の趣味は相変わらずだが、宏美はそんな彼を優しく見守っている。宏美のサバサバした性格も健在だが、健介の前では時折、女性らしい甘えを見せることもあった。二人の間には、情熱的でありながらも、互いの欠けを補い合うような、独特の関係性が築かれていた。

未来の孤独に不安を感じていた宏美も、今は愛する夫と子供に囲まれ、満たされた日々を送っている。そして健介は、初恋の相手であり、初めてを捧げた宏美という女性と共に、人生の新たな物語を歩み始めていた。

彼らの物語は、現代的な出会いから始まり、予期せぬハプニングを経て、家族という形へと収束したのだ。そこには、計算や打算もあったかもしれないが、それ以上に、互いを必要とし、求め合った二人の「現実」があった。

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