
「また君を指名しちゃった。麻里亜ちゃんがいると、他の子じゃダメなんだ」
哲也は、いつものように柔らかな声音でそう言った。
麻里亜は彼の言葉に、内心小さな喜びを感じていた。
指名が少ない自分にとって、哲也は数少ない、そして最も頻繁に来てくれるお客様だったからだ。
彼に会うたび、小料理屋を開くという夢への一歩が近づくような気がしていた。
初めて哲也に指名された日を思い出す。
新しい環境への不安と、慣れない仕事への緊張で硬くなっていた麻里亜に、彼は驚くほど優しかった。
巨乳好きだと公言するだけあって、麻里亜のGカップの胸を見る目は真剣だったが、それ以外の時間は穏やかで、他愛ない会話を交わした。
「可愛い下着だね。似合ってるよ。」と言われた時は、少し恥ずかしかったけれど、嫌な気はしなかった。
何度か店で会ううち、哲也は麻里亜の夢について熱心に耳を傾けてくれた。
調理師専門学校に通っていること、将来自分のお店を持ちたいと思っていること。
「すごいね、応援するよ」
と彼は言ってくれ、その言葉が麻里亜には心強く響いた。他の客とは違う、特別な関係になれるのかもしれない、という淡い期待が芽生え始めたのはその頃だった。
やがて哲也は店外でのデートに誘ってきた。
最初は戸惑ったが、店でいつも優しく、紳士的だった彼の態度を思い出し、意を決して承諾した。
そして、何度か店外で会ううちに、麻里亜はますます哲也に惹かれていった。
店にいる時とは違う、自然体で優しい彼がそこにいた。
食事をして、映画を見て、普通のカップルのような時間を過ごした。
彼は決して、店のように身体の関係を求めてこなかった。
そのことが、麻里亜の警戒心をゆっくりと溶かしていった。
ある雨の降る夜、哲也のマンションに招かれた。
ぽつぽつと窓ガラスを叩いていた雨粒が、やがてざあざあと音を立て始める。
部屋に二人きり。静寂が二人の間に流れ、麻里亜の心臓がドクドクと鳴り始めた。
「麻里亜ちゃん…」
哲也の声が、いつもより低く響いた。
彼の指先が、麻里亜の頬にそっと触れる。
その瞬間、全身に電流が走ったかのような痺れが広がり、肌が粟立つ。
「あ…」
思わず小さな声が漏れた。
「そんな…だめ、だよ…」
心の中で警鐘が鳴る。
でも、身体は正直だった。
哲也の手つきは、店でのそれとは違い、愛おしげに撫でさするような優しさがあった。
「いいんだよ、麻里亜ちゃん…」
彼の声が甘く響く。
彼の指が首筋から胸元へと滑る。彼女の胸が、その接触に震える。
服の上からでも、彼女の高まる感情は隠せなかった。
恥ずかしい・・・
でも、それ以上にゾクゾクする感覚が全身を駆け巡る。
「んっ…あっ…」
服がゆっくりと剥がされていく。
露わになった豊かな胸は、哲也の熱い視線に晒され、さらに赤みを帯びる。
彼の大きな手が、その全てを包み込んだ。
「あぁ…たまらない…」
哲也の言葉に、麻里亜の身体はさらに熱くなった。
彼の愛撫は繊細で、麻里亜の体は自然と反応した。
水音が響き、麻里亜の腰が勝手に揺れる。
身体の中心が、じんじんと熱を帯びていくのが分かった。
「あんっ、はんっ!」
普段は決して出さないような声が漏れ出て、自分で驚いた。
哲也の手が、太ももを這い上がり、デリケートな場所へと伸びてくる。
彼女の内側は熱く疼き、彼の指が触れる前から感覚が全身を駆け巡った。
湿り気を帯びた肌が擦れる音が生々しい。
「ぁーいい!」
哲也の指が敏感な場所を的確に捉えた時、麻里亜はたまらず叫んだ。
全身が痺れるような感覚に支配され、理性が吹き飛ぶ。
「かわいい…たまんねぇ…」
哲也の低い声が耳元で響く。
その言葉を聞いた瞬間、麻里亜の心は完全に彼に絡めとられた気がした。
やがて二人は一つになり、麻里亜はこれまで感じたことのない深い繋がりを体験した。
「アァァァ…」
自然と、懇願するような声が出ていた。
全身から力が抜け、哲也の腕の中に委ねる。
彼の動きに合わせて、麻里亜の体も自然と応え、二人は息を合わせるように動いた。
その親密さは、単なる肉体的な関係を超えた何かに思えた。
彼女の中に、彼への特別な感情が確かに芽生えていた。
二人の動きが高まるにつれ、麻里亜の感覚も頂点へと向かう。
哲也が近づいたことを察し、麻里亜も本能的に彼をより深く受け入れようとした。
「中に…」
恥ずかしさを超えた言葉が、自然と口から零れた。
そして訪れた頂点の瞬間、麻里亜の全身は震え、彼女は深い満足感の中に沈んでいった。
余韻に浸りながら、麻里亜は哲也にしがみついた。
この温かさ、この感覚…忘れ去らせる深い充足感だった。
もう、後の事なんてどうでもいい、とさえ思えていた。
麻里亜はひたすら感情に溺れこんでいった。
この瞬間、自分は哲也の女なのだと強く感じていた。
こうして麻里亜は、哲也の言葉巧みな罠に絡めとられ、店に通う回数を減らし、彼の「都合のいい関係」に堕ちていった・・・。
後に彼女は気づくことになる。
彼の優しさと甘い言葉は、全て彼女を思い通りにするための手段に過ぎなかったことを。
そして「特別」と感じた関係も、彼にとっては単なる一時的な楽しみでしかなかったことを。
しかし、その気づきはずっと後のことである。
今はただ、彼との甘美な時間に溺れるばかりだった。