体験談

君と歩む道 ~365日のプロポーズ~ 第11章:祝福の誓いと、永遠の旅立ち

朝、目覚めると、見慣れないホテルの天井が視界に広がった。昨夜は、里奈と別々の部屋で過ごした。隣に里奈がいないことに、一瞬だけ寂しさを覚えるが、今日は、二人の人生にとって最も大切な日なのだ。それを思うと、胸が高鳴った。まるで子供の頃の遠足の日のように、期待に胸を膨らませていた。カーテンの隙間から差し込む柔らかな朝日に、俺はゆっくりと体を起こした。

バスルームに向かい、鏡に映る自分を見つめる。今日、俺は里奈の夫になる。その事実が、俺の心に、これまで感じたことのないほどの大きな責任感と、そしてこの上ない幸福感をもたらした。シャワーを浴び、丁寧に髭を剃る。普段はざっと済ませてしまう身だしなみも、この日はいつもより時間をかけて、入念に整えた。肌触りの良いローションをつけ、髪をしっかりとセットする。鏡の中の自分は、まるで生まれ変わったかのように、引き締まった顔をしていた。

控え室に到着すると、既に両親や親族、友人たちが集まっていた。部屋全体が、祝福の温かい空気で満たされている。みんな、俺の顔を見るなり、満面の笑顔で「おめでとう!」と声をかけてくれた。その祝福の言葉一つ一つが、俺の心を温かく満たした。母親は、俺の顔を見て、嬉しそうに涙ぐんでいた。その目尻には、これまで苦労を重ねてきた証のような皺が刻まれている。


「康介…こんな日が来るなんて…本当に嬉しいわ。里奈ちゃんみたいな、良い子と巡り合えて、お母さん、本当に安心したわ」


母親の声は、喜びで震えていた。父親は、普段は口数の少ない男だが、この日は俺の肩を力強く叩き、「良かったな、康介。里奈さんを大切にしろよ。幸せにしてやれ」と、短いながらも温かい言葉をかけてくれた。その言葉の重みに、俺は改めて身が引き締まる思いだった。

友人たちも、俺の隣に集まって、からかいながらも、心からの祝福を贈ってくれた。


「矢野もついに結婚か!これで寂しい夜とはおさらばだな!良かったな!」
「おいおい、康介、顔がデレデレだぞ!」
「康介、泣いてんのか?」


そんな友人たちの言葉に、俺は照れながらも、笑顔で応じた。彼らの温かいからかいが、俺の緊張を少しだけ和らげてくれた。

やがて、時間となり、俺はタキシードに身を包んだ。白いシャツに、黒いタキシード。胸ポケットには、里奈が選んでくれた、純白の薔薇と緑の葉が美しいブートニアが挿してある。その花を見るたびに、里奈の笑顔が脳裏に浮かんだ。鏡に映る自分は、普段の銀行員とは全く違う、特別な男に見えた。まるで、生まれ変わった自分を、そのタキシードが象徴しているかのようだった。

新郎控室で、牧師と最終の打ち合わせを終え、いよいよチャペルへと向かう。扉の向こうからは、すでにパイプオルガンの厳かな音が聞こえてくる。心臓が、ドクンドクンと激しく脈打った。手が、わずかに震える。しかし、その震えは、緊張だけでなく、里奈への期待と、未来への希望に満ちていた。

チャペルの扉が開いた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。バージンロードの先に、純白のウェディングドレスを身にまとった里奈が立っていた。彼女の姿は、まるで天から舞い降りた天使のようだった。ベールに包まれた里奈の姿は、あまりにも美しく、まるで夢の中にいるかのようだった。陽光がステンドグラスを透過し、色とりどりの光がチャペル全体を包み込んでいる。里奈の周りを、祝福の光が照らし出しているようだった。その光景は、俺の目に焼き付いて離れない。

里奈は、父親の腕に抱かれ、ゆっくりと、しかし確かな足取りでバージンロードを歩いてくる。その一歩一歩が、俺たちの未来へと繋がっているように感じられた。俺は、里奈の瞳を真っ直ぐに見つめた。その瞳は、感動と、そして俺への深い愛情に満ちていた。里奈の父親は、俺の元まで歩いてくると、里奈の手を俺の手にそっと委ねてくれた。その手は、温かく、そして少し震えていた。長年大切に育ててきた娘を送り出す父親の想いが、その震えから伝わってくる。

「康介さん、里奈を頼むぞ。どうか、幸せにしてやってくれ」
里奈の父親の声は、震えていた。その言葉に、俺は力強く頷いた。その瞳は、父親の瞳と真っ直ぐに交差した。

「はい。里奈さんを一生大切に、幸せにします。必ず」

俺は、里奈の手を取り、祭壇へと向かった。里奈の指先が、俺の掌に触れるたび、電流のようなものが走る。里奈の白いグローブから、わずかに香る花の匂いが、俺の心を落ち着かせた。その感触は、俺たちの新しい人生の始まりを告げているようだった。

牧師の言葉に続き、俺たちは誓いの言葉を交わした。
「健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、妻を愛し、敬い、慈しみ、永遠に変わることなく、その命ある限り、真実の愛を誓いますか?」
牧師の声が、厳かにチャペルに響き渡る。俺は、里奈の瞳を真っ直ぐに見つめ、力強く答えた。

「はい、誓います」

里奈もまた、俺の瞳を見つめ、力強く誓いの言葉を口にした。その声は、清らかで、一点の迷いもなかった。


「はい、誓います」

そして、指輪の交換。俺は、里奈の細い指に、婚約指輪と結婚指輪を重ねてはめた。指輪は、里奈の指に吸い付くようにぴったりと収まり、キラキラと輝いた。その輝きは、俺たちの永遠の愛を象徴しているかのようだった。里奈の指先が、わずかに震えているのが、俺の指に伝わってくる。それは、感動と喜びの震えだった。

「誓いのキスを」


牧師の声に、俺はゆっくりと里奈のベールを上げた。露わになった里奈の顔は、涙で濡れていたが、満面の笑顔だった。その笑顔は、俺の心を温かい光で満たした。俺は、里奈の唇に、そっと自分の唇を重ねた。甘く、柔らかい感触。里奈の唇から、微かに香る甘い匂いが、俺の心を深く癒した。そのキスは、俺たちの愛を、そして永遠の約束を、確かなものにした。

チャペル全体が、祝福の拍手と、温かい歓声に包まれた。その音は、俺たちの愛が、多くの人々に認められ、祝福されている証だった。俺たちは、手を取り合い、笑顔でバージンロードを歩いた。ゲストの温かい眼差しが、俺たちの未来を祝福してくれているようだった。チャペルの外に出ると、青空が広がり、太陽の光がまぶしく輝いていた。その光は、まるで二人の新しい人生を照らす希望の光のようだった。

フラワーシャワーを浴びながら、俺たちはゲストの笑顔に応えた。色とりどりの花びらが舞い散る中、里奈は俺の腕にしっかりと抱きつき、幸せそうに微笑んだ。その笑顔は、俺にとって、何よりも尊いものだった。彼女の瞳は、未来への期待に満ち溢れていた。

披露宴は、笑いと感動に満ちたものだった。友人たちのユーモアあふれるスピーチ、家族からの温かいメッセージ。里奈は、感動して何度も涙を流していた。俺もまた、里奈の友人たちの温かい言葉や、両親の深い愛情に触れ、胸が熱くなった。特に、里奈の職場の同僚が、里奈との出会いから、彼女がどれだけ康介を大切に思っていたかを語ってくれた時には、里奈は人目をはばからず泣き崩れていた。その姿を見て、俺は改めて里奈の純粋さと、愛情の深さを知った。

里奈は、途中で純白のウェディングドレスから、彼女の魅力を一層引き立てる鮮やかなブルーのカラードレスへと衣装チェンジをした。深いブルーのドレスは、里奈の白い肌に映え、会場の照明にキラキラと輝いていた。まるで物語から飛び出してきたお姫様のように美しく、俺は思わず見惚れてしまった。会場からは、歓声と拍手が沸き起こった。

余興では、友人たちが趣向を凝らしたサプライズを用意してくれていた。俺たちの馴れ初めを再現した劇や、二人の思い出の写真を繋ぎ合わせた手作りの映像。どれもが、俺たちの出会いを、そして愛を、温かく祝福してくれていた。里奈は、一つ一つの余興に、心の底から楽しそうに笑っていた。その笑顔を見るたびに、俺の心は温かいもので満たされた。

クライマックスでは、里奈から俺へのサプライズレターがあった。里奈の優しい声が、会場に響き渡る。


「康介さんへ。康介さんと出会ってから、私の人生は大きく変わりました。それまで、私は一人で生きていくものだと思っていました。でも、康介さんは、いつも私を優しく包み込んでくれて、どんな時も支えてくれました。康介さんといると、どんな時も安心できるし、温かい気持ちになれます。康介さんの笑顔を見るたびに、私は心の底から幸せを感じます。これからも、ずっと康介さんの隣にいて、康介さんを支えていきたいです。愛しています。里奈より」


里奈の言葉を聞きながら、俺の瞳からは、もう涙が止まらなかった。里奈への感謝と、そして深い愛情が、俺の胸にこみ上げてきた。その涙は、俺の心の奥底に染み渡り、これまで感じたことのないほどの幸福感をもたらした。

俺もまた、里奈への感謝の言葉を伝えた。


「里奈、俺の人生に現れてくれて、本当にありがとう。里奈がいてくれるから、俺は毎日が満たされてる。里奈の笑顔が、俺の人生の全てになった。これからは、二人でどんな困難も乗り越え、最高の人生を築いていこう。一生、大切にするよ。心から愛してる」


俺の言葉に、里奈は再び涙を流していた。二人の視線が交わり、互いの深い愛情を確かめ合った。

披露宴の最後には、両親への感謝の手紙を読んだ。これまで、照れくさくて口にできなかった感謝の気持ちを、素直に伝えることができた。母親は、俺の言葉に号泣し、父親もまた、静かに涙を流しながら、俺たちの結婚を祝福してくれた。温かい拍手が、会場全体に響き渡った。

結婚式は、感動と喜びに満ちた一日だった。里奈と俺の愛が、多くの人々に祝福され、より一層深まったことを実感した。それは、単なる儀式ではなく、俺たちの愛の集大成であり、新たな人生の始まりを誓う、神聖な誓いの場だった。

夜、ホテルに戻り、二人きりになった時、俺たちは改めて、深く抱きしめ合った。里奈は、一日中笑顔を振りまいていたためか、疲れてぐったりしていたが、その瞳は、幸福感で満たされていた。

「康介さん、今日は本当にありがとう。私、すごく幸せ…」


里奈が、俺の胸に顔を埋めて囁いた。その声は、甘く、そして心の底からの感謝に満ちていた。

「俺もだよ、里奈。里奈と結婚できて、俺は世界一幸せな男だ。本当にありがとう」


俺は、里奈の髪を優しく撫でながら答えた。その温かさが、俺の心に深く染み渡る。

俺たちは、もう二度と離れないと、互いの体を抱きしめながら誓った。月明かりが差し込むホテルの部屋で、二人の体は、まるで溶け合うかのように一つになった。肌と肌が触れ合うたび、俺たちの絆は、より一層深く、そして確かなものになっていくのを感じた。それは、言葉では表現できないほどの、強烈な快感と、深い安心感だった。

「康介さん…、愛してる」


里奈が、俺の胸に顔を埋めて囁いた。

「俺もだよ、里奈。永遠に愛してる」


俺は、里奈を強く抱きしめ、その温かい温もりを全身で感じた。

俺たちの愛は、永遠に輝き続ける。その輝きは、俺たちの未来を、明るく照らしてくれるだろう。この日から、俺たちは夫婦として、新たな人生の旅を始める。里奈という存在が、俺の人生に意味を与え、彩りを加えてくれた。もう、あの頃の孤独な日々には、戻れない。戻りたくない。俺は、里奈の存在を、心の底から求めていた。そして、その愛を、永遠に守り続けると、心に強く誓った。二人の未来は、希望に満ちていた。

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