体験談

老教授の春:知られざる渇望と、若き司書の甘い誘惑 第1章:指先の触れ合いと広がる予感。そして、秘めたる渇望

美術館でのデートは、想像以上に充実したものだった。久美子と私は、絵画の前で言葉を交わすたびに、互いの感性が深く共鳴し合うのを感じた。彼女の物事の本質を見抜く目に、私は何度もハッとさせられた。知的な刺激と、穏やかな空気。それは、私が長年求めていた関係の萌芽だった 。

デートの終盤、私たちは小さなカフェに立ち寄った。温かいコーヒーを片手に、これまでの人生や、将来の夢について語り合った。久美子の言葉は、いつも真摯で、そしてどこか透明感があった。

「小野先生は、なぜ大学教授になろうと決められたんですか?」

彼女の問いかけに、私は少し照れた。これまで、そんな個人的な質問をされたことはなかったからだ。

「そうですね……。きっかけは、高校生の頃に読んだ一冊の歴史書でした。過去の人々の営み、思想、そしてそこから生まれる文化に、深く魅せられたんです。知を探求すること、そしてそれを次世代に伝えることに、私の人生を捧げたいと、その時強く思いました。」

久美子は、私の話をじっと聞いてくれた。その真剣な眼差しに、私はさらに心を許した。

「素敵ですね、小野先生。私も、図書館司書という仕事を通じて、本と人、知識と人を繋ぐことに喜びを感じています。特に、古い書物と向き合っていると、時を超えて先人たちの声が聞こえてくるような気がして……。」

彼女の言葉は、私の心の奥底に響いた。私たちは、互いの知的好奇心を尊重し合い、その根底にある情熱を理解し合えた。マッチングアプリという現代的な出会いでありながら、二人の間には、古書のようにゆっくりと熟成される、静かで深い愛情が育まれていくのを感じた 。

会計を済ませ、カフェを出る。外は、すっかり夜の帳が降りていた。美術館のライトアップが、幻想的に輝いている。

「今日は、本当にありがとうございました、小野先生。とても有意義な一日でした。」

久美子が、柔らかく微笑んだ。その笑顔は、夜の闇に浮かぶ月のように、私の心を照らした。

「いえ、こちらこそ、久美子さん。私も、これほど充実した時間を過ごしたのは、本当に久しぶりです。」

改札へと向かう道すがら、私たちは自然と肩を並べて歩いた。ふとした拍子に、彼女の指先が私の手の甲に触れた。ヒュッと、私の心臓が音を立てた。まるで、何十年も眠っていた感情が、一瞬にして目覚めたかのようだった。その小さな触れ合いは、私にとって、とてつもない衝撃だった。温かく、柔らかく、そして、どこか遠慮がちで。一瞬だけ触れ、すぐに離れていったその感覚に、私は言いようのない郷愁と、そして、もっと触れていたいという強い願望を覚えた。

私は、これまで女性の身体に執着したことなどなかった。研究室と書斎が私の世界の全てであり、肉体的な触れ合いなど、無縁のものだと信じて疑わなかった。だが、今、この指先の触れ合いが、私の硬質な殻を、音もなく打ち破っていく。久美子の手の甲の柔らかさ、その温もり。それは、知的な刺激とは全く異なる、本能的な渇望だった。

「あの……」

私は、思わず言葉を発しようとしたが、喉が渇き、声が出なかった。久美子は、私の顔を見上げた。その澄んだ瞳に、私の欲望が映し出されているような気がして、私は慌てて視線を逸らした。

「どうかされましたか、小野先生?」

心配そうな久美子の声に、私は平静を装って答えた。

「いえ、なんでもありませんよ。ただ、もう少し、こうして歩いていたいな、と。」

それは、私の本心だった。このまま、時間が止まってしまえばいいのに。この柔らかな手の温もりを、もっと感じていたい。心の中で、そんな子供じみた願いが渦巻いていた。

改札前で立ち止まる。別れの時が来た。

「では、小野先生。また、メッセージさせていただきますね。」

「ええ、もちろんですよ、久美子さん。今日は本当にありがとうございました。」

私は、精一杯の笑顔を作った。彼女は、軽く頭を下げると、改札を通り抜けていった。その背中を見送りながら、私の心は、まだあの指先の触れ合いの余韻に浸っていた。

マッチングアプリでの出会いならではの「オンライン上のイメージとオフラインの現実」のギャップは、私の場合、良い意味で裏切られた。久美子は、画面越しに感じた知的な魅力に加え、実際に会ってみると、その所作の全てが美しく、控えめな中にも確固たる意志を感じさせる女性だった。特に、あの指先の触れ合いは、私の人生において、新しい扉が開かれたような衝撃だった。

電車に乗り込み、座席に深く身を沈める。窓の外を流れる夜景は、先ほどまでとは違う、鮮やかな色を帯びて見えた。私の手の甲には、まだ久美子の指先の温もりが残っているかのようだった。それは、これまで私が知らなかった、女性の身体を求める感情の芽生えだった。

書斎に戻っても、私はいつものように研究に集中できなかった。久美子の笑顔、声、そして、あの指先の触れ合いが、脳裏から離れない。私は、自分の手の甲をじっと見つめる。そこに、確かに久美子の存在を感じた。

「久美子さん……」

無意識のうちに、彼女の名前を呟いていた。この感覚は、一体何なのだろう。長年、知の探求だけが私の喜びだと思ってきた。だが、今、私の心は、久美子という一人の女性によって、大きく揺さぶられている。

スマートフォンの画面を開き、久美子とのメッセージ履歴を辿る。一つ一つの言葉が、まるで宝石のように輝いて見えた。私たちは、すでに多くのことを語り合ってきた。だが、会って、触れ合うことで、その関係は新たな段階へと進んだのだ。

「彼女の身体に、もっと触れてみたい。」

理性の蓋が、少しずつ開いていく。私は、これまで経験したことのない、生々しい欲望に気づかされていた。それは、知識や学問とは全く異なる、本能的な衝動だった。久美子の柔らかな肌、しなやかな身体。それらを想像するだけで、私の全身が熱を帯びるようだった。この感情は、一体どこへ向かうのだろうか。そして、私と久美子の関係は、これからどのように発展していくのだろうか。私は、まだ見ぬ未来に、かすかな期待と、そして、ほんの少しの狼狽を覚えているのだった。

美術館でのデートから数日後、私たちは再びメッセージを交わし始めた。しかし、以前とは少し違っていた。言葉の端々に、あの指先の触れ合いの余韻が宿っているような気がした。久美子からのメッセージは、相変わらず知的で丁寧だったが、その行間には、かすかな親密さが加わっているように感じられた。

「小野先生、先日のお礼に、今度は私が先生をある場所へご案内してもよろしいでしょうか。きっと、先生の知的好奇心を満たせる場所だと思います。」

彼女からの提案に、私は胸が高鳴った。どんな場所だろう。彼女が私に提案する場所なら、きっと私好みのものであるに違いない。

「それは光栄です、久美子さん。ぜひ、ご一緒させてください。久美子さんが選んでくださる場所なら、どこへでも。」

私の返信に、彼女はすぐに「ありがとうございます!」と短いながらも、弾んだ様子のメッセージを送ってきた。その文面から、彼女の喜びが伝わってくるようだった。

次のデートは、とある大学の古い図書館だった。門をくぐると、歴史を感じさせる重厚な建物が目に飛び込んできた。

「ここは、私が学生時代によく利用していた図書館なんです。一般の方も利用できる、貴重な資料がたくさん収蔵されているんですよ、小野先生。」

久美子の声は、どこか誇らしげだった。彼女が目を輝かせながら案内する姿に、私は魅了された。これまで、多くの学生たちを指導してきた私だが、こんなにも無邪気に知への探求心を示す女性に出会ったのは初めてだった。

図書館の奥深く、私たちは貴重書が並ぶ一角へと足を踏み入れた。ひっそりと並ぶ古書たち。その一冊一冊が、長い歴史の証人のように、静かに佇んでいた。

「わぁ……素晴らしいですね、久美子さん!」

私は思わず声を上げた。薄暗い書架に並ぶ、革表紙の古書たち。その独特の匂いが、私の知的好奇心を刺激した。

「小野先生も、きっと喜んでくださると思っていました。」

久美子が、満足そうに微笑んだ。その笑顔は、知的な魅力に満ち溢れていた。彼女は、手袋をはめ、慎重に一冊の分厚い書物を書架から取り出した。

「これは、18世紀に書かれた植物図鑑なんです。細密画が本当に美しくて、当時の職人たちの技術の高さに驚かされます。」

久美子がページを捲ると、色鮮やかな植物の絵が目に飛び込んできた。精緻な筆致で描かれた花々や葉っぱは、今にも動き出しそうだった。

「これは見事ですね……。まるで、生きているかのようだ。」

私は、食い入るようにその図鑑に見入った。久美子の指先が、そのページの端をなぞる。その白い、細い指先に、私の視線は吸い寄せられた。前回、美術館で触れた指先の温もりを思い出す。私は、無意識のうちに、彼女の指先へと手を伸ばしそうになった。だが、寸前で思いとどまる。公共の場だ。それに、まだそこまでの関係ではない。理性で、本能を抑え込んだ。

しかし、私の心臓は、ドクドクと音を立てていた。彼女の柔らかな指先が、この古書の紙面に触れている。その行為一つ一つが、私にはたまらなく魅力的に映った。知的な探求と、その奥底に潜む肉体的な渇望。二つの感情が、私の心の中でせめぎ合っていた。

久美子は、私の視線に気づいたのか、ふと顔を上げた。その澄んだ瞳と視線がぶつかる。私は、慌てて視線を逸らした。

「どうかされましたか、小野先生?」

「いえ、なんでもありません。ただ、あまりにも見事な図鑑だったので、見入ってしまって。」

私は、平静を装って答えた。だが、私の頬は、きっと赤く染まっていたに違いない。久美子は、そんな私を見て、くすりと笑った。その笑い声は、静かな図書館の空気に、さざ波のように広がる。

その後も、私たちは図書館内を散策し、様々な貴重書や資料を見て回った。お互いの研究や仕事について語り合い、時には互いの専門分野に踏み込んだ議論を交わすこともあった。

「小野先生は、日本の近代文学において、どのようなテーマが最も重要だとお考えですか?」

「そうですね、久美子さん。私はやはり、個人の内面と社会の構造との葛藤、というテーマが、近代文学の根底にあると考えています。特に、夏目漱石の作品群には、その葛藤が色濃く描かれているように思いますね。」

「なるほど。私も同感です。漱石の作品を読むと、当時の人々の苦悩や、社会の変化に翻弄される姿が、鮮やかに浮かび上がってきます。」

共通の知的好奇心と、相手の知性を尊重する姿勢が、二人の関係をより強固なものにした。言葉を交わすたびに、私たちの心は深く繋がり、知的な絆が結ばれていくのを感じた。

しかし、私の心には、知的な繋がりとは異なる、もう一つの感情が芽生えていた。それは、久美子の身体に対する執着、そして、彼女を求める感情だった。図書館という知の殿堂にいるにも関わらず、私の意識は、時折、久美子のしなやかな首筋や、柔らかな髪の毛、そして、先ほど触れそうになった指先に吸い寄せられた。

彼女が書架から本を取り出すたびに、その身体がわずかに傾く。そのたびに、ワンピースの裾から覗く、細く伸びた足首。私は、その全てを、意識せずにはいられなかった。これは、一体どういうことなのだろう。長年、私は自分の感情を理性でコントロールしてきたはずだ。だが、久美子の存在は、私の理性という堅固な壁を、ゆっくりと、しかし確実に崩していくようだった。

図書館を出て、私たちは近くの喫茶店に入った。温かい紅茶を飲みながら、私たちは今日の感想を語り合った。

「今日は、本当にありがとうございました、久美子さん。素晴らしい場所にご案内いただき、感謝しています。」

「いいえ、小野先生に喜んでいただけて、私も嬉しいです。私も、小野先生とこうして知的な会話ができる時間が、本当に楽しいです。」

久美子が、にこやかに微笑んだ。その笑顔は、私の心に深く刻まれていく。私は、彼女の手を握りたい衝動に駆られた。その柔らかな掌を、私の大きな掌で包み込みたい。そうすれば、きっと、私はこの胸の内の熱を、少しは鎮めることができるだろう。

だが、私はまたしても、その衝動を理性で抑え込んだ。まだ、早い。彼女は、まだ私を「先生」と呼ぶ。その呼称は、私と彼女の間に、まだ見えない境界線があることを示唆しているようだった。

しかし、私の心の中では、その境界線を越えたいという強い願望が渦巻いていた。彼女の身体を求める感情は、日を追うごとに、より鮮明に、より生々しくなっていく。それは、まるで乾ききった大地が水を求めるかのような、本能的な渇望だった。

帰り道、駅のホームで、私たちは次の再会を約束した。

「では、久美子さん、また近いうちに。」

「はい、小野先生。楽しみにしています。」

久美子は、電車に乗り込み、窓越しに私に手を振った。私は、彼女の姿が見えなくなるまで、ずっとホームに立ち尽くしていた。

電車が走り去った後も、私はその場を動けなかった。ホームの冷たい風が、私の頬を撫でる。だが、私の胸の内は、熱い炎に包まれているかのようだった。久美子の知的な魅力。そして、その奥に秘められた、私の肉体的な欲望。これらが混じり合い、私の心は、これまで経験したことのない感情の渦に巻き込まれていた。

私は、この感情にどう向き合えばいいのだろうか。長年、知を追求することだけが人生の全てだと信じてきた私が、今、一人の女性の身体に、これほどまでに執着している。この予期せぬ感情は、私の人生に、一体何をもたらすのだろうか。私は、まだ見ぬ未来に、期待と、そして、ほんの少しの恐怖を覚えているのだった。

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