恋愛ストーリー

欲望の螺旋:二人の美女が紡ぐ、秘密の愛の物語 第3章 続き

「おい、浩二!」

俺は携帯を耳に押し当て、声を荒げた。

その声には、抑えきれない怒りと、焦燥が混じっていた。

喉の奥が張り裂けそうだった。

受話器の向こうからは、相変わらずの間の抜けた、しかしどこか俺の焦りを見透かしたような浩二の声が聞こえてくる。

奴の声が、耳障りな雑音のように響いた。

「なんだよ、翔太。ご機嫌いかがかな?」

その軽薄で、まるで俺の苛立ちを楽しんでいるかのような声が、俺の怒りに油を注ぐ。

俺の感情は、まるで煮え滾る溶岩のように、今にも心の奥底から噴き出しそうだった。

こめかみに青筋が浮き上がり、血管が脈打つのが自分でも分かった。

「くそっ……!」

俺の拳が、テーブルの端を激しく叩きつけた。ガツン、と鈍い音がした。

「ご機嫌だと? ふざけるな! 秘書交換は中止だ。すぐに恵子を戻せ! 聞こえてるのか、浩二!」

一瞬の沈黙。

その沈黙は、深淵の底から響く不吉な予兆のように、俺の神経を逆撫でする。

時計の秒針が、カチ、カチ、とやけに大きく聞こえた。

その音が、俺の焦りを加速させた。

そして、浩二の低い、悪魔のような笑い声が、受話器越しに響いた。

それはまるで、獲物を捕らえた獣が、その牙を剥き出しにして嗤うような、冷酷で嘲りのこもった笑いだった。

ぞわ、と背筋に冷たいものが走る。

「ハハハ……今さら何を言ってるんだ? そう簡単にいくわけないだろう。ああ、そうだ。中止するなら、示談金として1億円、用意してくれるか?」

「1億円だと!?」

俺は絶句した。

その言葉は、俺の頭を鈍器で殴りつけるかのような衝撃だった。

まるで脳味噌が揺さぶられる感覚だ。怒りで全身が震える。

目の前が赤く染まるような錯覚に陥り、視界が歪んだ。

喉の奥がカラカラに乾き、唾を飲み込むことさえ困難だった。

「ふざけるな!」

声にならない叫びが、俺の喉から漏れた。

「ふざけるな! お前、本気で言ってるのか!?」

「ああ、本気だよ。それと、もし応じないなら、恵子ちゃんはもう二度と君の元には戻さない。彼女、こっちでもすごく役に立ってるからねぇ。うちの会社のモデルとしても、大活躍だよ。はは、翔太、恵子ちゃんのグラビア、なかなかものだよ、あれは」

浩二の言葉が、俺の脳裏に恵子の姿を鮮明に、そして残酷に描き出す。

均整の取れた完璧なプロポーション。透き通るような白い肌。

その可憐な姿が、浩二の会社で、あの男の目の前で、見知らぬ男たちの視線に晒され、下着モデルとして働いているのかと思うと、俺の胸は嫉妬と怒りで張り裂けそうになった。

胃の奥が、ぎゅっと締め付けられる。

恵子の無垢な笑顔が、俺の胸を締め付ける。

あの男に、あの恵子を……。

その想像だけで、俺の心は灼熱の炎に包まれ、内側から焼け爛れるような苦しみに襲われた。

心臓が、まるでマラソンを終えたばかりのように激しく脈打つ。

ドクン、ドクン、と不規則なリズムを刻む。

「それに、翔太。お前、裕美ちゃんとはずいぶん楽しんだそうじゃないか?」

浩二の言葉が、俺の心を深く抉る。

ニヤリ、と下卑た笑いが受話器の向こうから聞こえる。

「裕美ちゃんのグラマーな身体、存分に味わったんだろ? あの豊満な胸、吸い付くような腰つき。俺の秘書として、お前には十分にサービスさせたつもりだが? その迷惑料も合わせて、1億円は妥当だろう。どうだ、翔太? 裕美ちゃんとの甘い夜の記憶、それも込みの金額だぜ?」

俺の顔から、血の気が引いた。

浩二の言葉は、まるで毒矢のように俺の心を貫いた。

裕美と肉体関係を持ったことは事実だ。

その時の彼女の喘ぎ声、俺の指に絡みつく柔らかな肌の感触、その全てが鮮明に蘇る。

だが、それを浩二に弄ばれる屈辱は、言葉にできないほどだった。

腸が煮えくり返るような怒りが、俺の全身を駆け巡った。

「てめえ……っ!」

俺は奥歯を噛み締めた。

その衝撃で、歯が軋む音が、耳の奥で響いた。

口の中に、血の味が広がったような気がした。

1億円。安い金じゃない。

俺の会社にとっても、決して容易に捻出できる額ではない。

しかし、恵子を、彼女をあんな男の好きにさせてたまるか。

あの男の汚れた手で、恵子の純粋な身体が穢されるなど、想像するだけで吐き気がした。

恵子を失う恐怖と、浩二への底知れない憎悪が、俺の理性的な判断を完全に狂わせた。

俺の頭の中は、恵子を取り戻すというただ一つの執念で埋め尽くされた。

他の何もかもが、霞んで見えた。

俺の視界は、怒りで赤く染まっていた。

「分かった……。1億円、払う。その代わり、二度と俺たちの前に姿を現すな。ビジネスパートナーとしての契約も、今日限りで解消だ! これで、お前とは完全に終わりだ、浩二!」

俺の声は、怒りでか細く震えていた。

喉の奥が張り裂けそうだった。

浩二は満足げに、そして嘲るように笑い、ブツッと音を立てて電話を切った。

その電話の切れる音が、俺の心臓に冷たい刃を突き立てるかのようだった。

受話器を置いた俺は、そのまま重い溜息をつく。

アスファルトに叩きつけられるように、俺はソファに倒れ込んだ。

1億円という大金と引き換えに、俺は恵子を取り戻した。

しかし同時に、長年築き上げてきた浩二とのビジネス関係に終止符を打った。

俺の心は、勝利の歓喜と、深い喪失感の間で、激しく揺れ動いていた。

空虚感が、俺の胸に広がる。

まるで、大切な何かを失ったような、言いようのない喪失感が俺を包み込んだ。

数日後、恵子が俺の元に戻ってきた。

社長室の重厚な扉が、ゆっくりと、そして重々しく開き、彼女がそこに立っていた。

以前よりも少し痩せたように見えたが、その瞳には以前と同じ、力強い光が宿っていた。

しかし、その奥には、深い傷跡が刻まれているのが見て取れた。

まるで、魂が引き裂かれ、無理やり縫い合わされたような、痛ましい影が宿っていた。

その姿に、俺の胸は締め付けられた。

「翔太さん……」

彼女が俺の名前を呼んだ瞬間、その優しい声が俺の耳に届いた途端、俺の胸に温かいものが込み上げてきた。

それは、安堵であり、後悔であり、そして言いようのない愛おしさだった。

全ての感情が、波のように押し寄せ、俺の心を洗い流していく。

俺は衝動的に、まるで乾ききった大地が水を求めるかのように、恵子に駆け寄り、その身体を抱きしめた。

彼女の柔らかな身体が、俺の腕の中にすっぽりと収まる。

その温もりは、凍え切っていた俺の心臓に、ゆっくりと血を巡らせていくようだった。

彼女の体温が、俺の全身に染み渡る。

「恵子……。本当に、すまなかった。俺が、君をあんな目に遭わせてしまって……」

俺は彼女の髪に顔を埋め、何度も謝罪の言葉を繰り返した。

髪からは、浩二の会社の匂いではなく、恵子本来の、甘く優しい、花の蜜のような香りがした。

それが俺の胸に、新たな安堵をもたらす。

恵子は何も言わず、ただ俺の背中に腕を回し、ギュッと抱きしめ返してくれた。

その温もりが、俺の心に安らぎを与えてくれた。

恵子の身体の微かな震えが、彼女が経験した筆舌に尽くしがたい苦痛を物語っていた。

俺は、その震えを、全身で受け止めるように、さらに強く、深く抱きしめた。

彼女の涙が、俺のシャツにじんわりと染み込んだ。

その温かさが、俺の胸に焼き付いた。

「翔太さん……」

恵子は、俺の胸に顔を埋めたまま、掠れた声で囁いた。

「杉本社長に、穢された記憶を……全部、忘れさせてほしい……」

彼女の言葉は、まるで心の底から絞り出すような、切実な願いだった。

その声が、俺の胸に響き渡る。

恵子の身体が、俺の腕の中で、微かに震え始めた。

それは、恐怖ではなく、俺を求める震えだった。

彼女の指先が、俺の背中を、ゆっくりと撫でる。

その熱が、俺の肌に伝わってきた。

「恵子……」

俺は、彼女の顔をそっと持ち上げた。

恵子の瞳は、涙で潤んでいたが、その奥には、俺だけを求める、強い光が宿っていた。

彼女の唇が、微かに開かれ、俺の唇を求めている。

俺は、迷うことなくその唇に吸い付いた。

彼女の口の中は、甘く、そして熱かった。

舌が絡み合い、互いの熱を交換する。

恵子の手が、俺のシャツの裾を掴み、ゆっくりと引き上げる。

俺は、その意図を理解し、彼女の動きに合わせて、シャツを脱ぎ捨てた。

恵子の視線が、俺の裸の胸板に注がれる。

彼女の瞳は、欲望の色に染まっていた。

恵子の手は、震えながらも、俺のベルトに伸びた。

「翔太さん……もっと……もっと、私を深く、感じさせて……」

恵子の声は、喘ぎに変わっていた。

俺は、恵子を抱き上げ、ソファーへと向かった。

彼女の柔らかな身体が、俺の腕の中で、しなやかに曲線を描く。

ソファーに彼女をそっと降ろし、俺もその上に覆いかぶさった。

恵子の大きな瞳が、俺を見つめ、その中に俺だけが映っていた。

俺は、彼女の均整の取れたプロポーションを、ゆっくりと撫でた。

滑らかな肌触り、弾むような胸の感触。指先が、その曲線に沿って滑り落ちていく。

彼女の身体は、俺の指の動きに反応して、微かに震えた。

「恵子……愛してる……」

俺は、彼女の耳元で囁き、そのまま、彼女の首筋にキスを落とした。

恵子の身体が、さらに激しく震える。

彼女の息が、乱れ始めた。

俺は、彼女のブラジャーのホックを外し、その白い肌を露わにした。

豊満な胸が、俺の視界いっぱいに広がる。

その頂点には、ピンク色の蕾が、俺の指を求めて硬くなっていた。

俺は、その蕾を、舌でゆっくりと舐め上げた。

恵子の身体が、弓なりに反る。

「んっ……翔太さん……もっと……」

恵子の喘ぎ声が、寝室に響き渡る。

俺は、彼女の柔らかな胸を、貪るように吸い付いた。

片手でその弾力のある感触を堪能しながら、もう片方の手は、彼女のショーツのゴムに触れた。

そこには、湿った熱が、俺の指を誘っている。

俺は、迷うことなく指を滑り込ませた。

恵子の身体が、ビクン、と大きく跳ね上がった。

「あああ……翔太さん……そこ……」

彼女の甘い声が、俺の理性を吹き飛ばす。

俺は、彼女の身体をさらに深く、そして激しく求める。

恵子の肉体は、俺の欲望を全て受け止めるかのように、熱く、そして粘り強く応えてくれた。

互いの肌が触れ合うたびに、甘く、そして痺れるような快感が全身を駆け巡る。

恵子の太ももが、俺の腰をしっかりと抱き込んだ。

その動きは、俺をさらに深く、彼女の奥へと誘い込むようだった。

俺は、恵子の奥深くで、何度も、何度も、彼女の全てを満たすように、激しく突き上げた。

恵子の絶叫が、寝室に木霊する。

彼女の身体は、俺の動きに合わせて激しく揺れ、その度に、淫靡な水音が響いた。

恵子の指が、俺の背中に深く食い込む。

「翔太さん……翔太さん……愛してる……!」

恵子の声が、喜びと快楽に満ちていた。

そして、俺もまた、彼女の奥深くで、全てを解放した。

熱いものが、彼女の身体を満たしていく。

恵子の身体が、俺の腕の中で、心地よい脱力感に包まれた。

俺は、彼女の汗で濡れた髪をそっと撫で、その頬にキスを落とした。

恵子の息は、まだ少し乱れていたが、その表情には、深い安堵と、満たされた幸福感が満ちていた。

彼女の瞳は、輝いていた。その輝きは、まるで穢された過去が、洗い流されたかのように見えた。

恵子が戻ってきてからの日々は、以前と変わらないものだった。

いや、以前よりも穏やかで、満たされたものだった。

まるで、長らく渇ききっていた大地に、

ようやく恵みの雨が降り注いだかのようだった。

オフィスに満ちていた重い空気が、彼女の存在によって、一瞬にして清々しいものへと変わった。

俺は恵子と向き合う時間を大切にし、彼女の存在が俺にとってどれほど大きいものだったかを改めて実感した。

彼女の笑顔は、俺の会社に、そして俺自身の心に、再び光をもたらしてくれた。

失われた光が、再び灯されたような感覚だった。

彼女の温かい手が、俺の心を癒していく。

一方、松田裕美は、杉本浩二の秘書として彼の元に戻っていた。

俺の会社から浩二の元へと戻った彼女は、以前にも増して冷たい表情を纏うようになったと、共通の取引先から耳にした。

彼女の瞳の奥には、深い絶望と、そして復讐心が宿っているようにも見えた。

その姿は、まるで氷の彫刻のように冷たかった。

しかし、彼女は秘書交換の際に竹内翔太の仕事ぶりを間近で見て、その人間性に深く惹かれていた。

彼の部下への配慮、ビジネスに対する真摯な姿勢、そして何よりも、彼の持つ独特の魅力が、裕美の心を捉えて離さなかったのだ。

肉体関係を持った際も、浩二とは違う、心の底から満たされるような幸福感を感じていたため、浩二の元に戻ってからも、常に翔太と浩二を比較し、段々と翔太への抑えきれないほどの激しい想いを募らせていた。

彼女の心は、まるで底なし沼のように、翔太への執着で満たされていった。

あれから数ヶ月が過ぎた。季節は巡り、冬の寒さが身に染みる頃となった。

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