獣たちの邂逅
オフィスでの情事が終わり、俺と恵子は乱れた息を整え、それぞれ服を直し、何食わぬ顔でオフィスを後にする準備をしていた。
蛍光灯の明かりは、まだ点いたままだが、外は完全に闇に包まれている。
恵子の頬はまだ少し赤みを帯びていたが、その瞳はいつもの知的な輝きを取り戻そうとしていた。
誰も俺たちの秘密を知らない。その事実は、俺に一層の背徳感と、他にはない優越感をもたらしていた。
恵子がオフィスの照明を消そうとスイッチに向かう。その背中に、俺はそっと近づいた。
恵子は俺の気配に気づき、小さく肩を震わせる。俺は彼女の腰に手を回し、自分に強く引き寄せた。
恵子の身体が、俺の胸にぴったりと張り付く。背中越しでもわかる、彼女の柔らかな肌の感触、そして温かい体温が、俺の指先から全身へと伝わってきた。
「翔太さん……」
恵子の声が、甘く、誘うように俺の耳元で囁かれる。俺はそのまま、恵子のタイトスカートに包まれたヒップに触れた。
豊かで、弾力のある感触が、俺の掌に吸い付く。軽く握りしめると、恵子の身体がピクリと反応し、小さく息を呑んだ。
「んっ……」
その反応が、俺の欲望をさらに刺激する。
俺はそのまま恵子の尻を撫でながら、ゆっくりとオフィスを後にした。
カチャリ、と鍵をかける音が、静かな廊下に響き渡る。
夜の冷気が火照った身体に心地よい。
エレベーターを待つ間も、俺の指先は恵子の尻に触れ続けていた。彼女は微かに震えながらも、拒むことはしない。むしろ、その身体は俺に寄り添うように、さらに密着してきた。
エレベーターの扉が開き、俺たちは無言で乗り込んだ。
閉まる扉の向こうに、人気のないオフィスフロアの暗闇が広がる。
密閉された空間で、俺と恵子の間に流れる空気は、一層濃密になった。
階下へ降りるわずかな時間も、俺は恵子の身体に触れ続けていた。彼女の熱が、俺の指先からじんわりと伝わってくる。
1階に着き、扉が開いた。
会社のエントランスを抜け、外に出る。
都会の喧騒が、先ほどの密室での情事を打ち消すかのように、俺たちの耳に飛び込んでくる。
別れ際、恵子は俺を見上げた。その瞳は、昼間の秘書としてのそれとは全く違う、潤んだ、甘い光を宿している。
「翔太さん、明日の午前中は、杉本社長との打ち合わせでしたよね」
その声は、いつもの秘書としての冷静さを保とうとしていたが、その奥には、俺への深い好意と、甘い余韻が混じり合っているのが分かった。
「ああ。重要な打ち合わせだからな」
俺は恵子の髪を軽く撫でた。
恵子は、俺の指先が触れただけで、嬉しそうに目を細めた。その表情に、俺は恵子を深く愛おしく感じた。
快楽だけではない、この女の全てが、俺の精神に深く根付いていた。
俺は、そのまま恵子の顔を両手で包み込み、彼女の唇をゆっくりと奪った。
チュッ、と湿った音が、夜の静寂に溶けていく。
恵子の身体が、一瞬で蕩けていくのが分かった。彼女の唇は甘く、柔らかく、俺の舌を迎え入れる。
「んんっ……翔太さん……」
恵子の甘い声が、俺の口の中でかき消された。
彼女の身体が、俺の腕の中でさらに密着してきた。俺は恵子を深く抱きしめ、もう一度、深く口付けた。
互いの舌が絡み合い、呼吸が乱れる。
数秒間、俺たちはその場で貪るように唇を合わせ続けた。別れの寂しさと、次の再会への期待が入り混じった、甘美なキスだった。
「じゃあ、恵子。送っていくよ」
俺は、恵子の手を握り、恋人のように指を絡ませながら、繁華街へと歩き出した。
夜の街のネオンが、俺たちの姿を彩る。
街を行き交う人々は、俺たちの秘密など知る由もない。その事実が、俺の背徳感をさらに煽った。
俺たちは、路地裏にひっそりと佇む隠れ家のようなイタリアンレストランへと入った。店内は落ち着いた雰囲気で、ジャズが静かに流れている。テーブル席に座ると、恵子は少しはにかんだような笑顔を見せた。
「翔太さん、今日はご馳走してもらってもいいですか?」
恵子の声は、まるで猫のように甘かった。その無邪気な表情が、俺の心を捕らえて離さない。
「もちろん。恵子のためなら、いくらでもな」
俺は恵子の手に触れ、優しく撫でた。恵子の頬が、さらに赤みを帯びる。
料理を待つ間も、俺たちは他愛もない会話を続けた。仕事の話、休日の過ごし方、好きな映画。まるで、一般的な恋人同士のような時間。
だが、俺たちの間には、誰も踏み込むことのできない、甘く危険な秘密があった。
ワインを飲みながら、恵子が俺の腕にそっと触れてきた。
「翔太さん、今日、オフィスで……すごく、気持ちよかったです」
囁くような恵子の声に、俺の身体がゾクリとした。周囲には人がいるというのに、彼女は平然と、俺たちの秘密を匂わせる。その大胆さが、俺をさらに惹きつける。
「恵子も、感じてくれていたんだな」
俺は恵子の指を絡め取り、ぎゅっと握りしめた。
彼女の指先が、俺の指に吸い付くように絡みつく。
食事を終え、ほろ酔い気分で恵子のマンションへと向かった。
夜風が、俺たちの髪を揺らす。マンションのエントランスに着くと、恵子は俺を見上げた。その瞳には、切ないほどの愛おしさが宿っていた。
「送ってきてくれて、ありがとうございます、翔太さん」
恵子は、名残惜しそうに俺の手を離そうとしない。
俺は、彼女の顔を両手で包み込み、そのまま唇を重ねた。
チュッ、と、柔らかな唇が触れ合う音が、静かなエントランスに響く。
恵子の身体が、一瞬で蕩けていくのが分かった。彼女の唇は甘く、柔らかく、俺の舌を迎え入れる。
「んんっ……翔太さん……」
恵子の甘い声が、俺の口の中でかき消された。
彼女の身体が、俺の腕の中でさらに密着してきた。
俺は恵子を深く抱きしめ、もう一度、深く口付けた。
互いの舌が絡み合い、呼吸が乱れる。数秒間、俺たちはその場で貪るように唇を合わせ続けた。
「またな、恵子」
俺は唇を離し、帰ろうと一歩踏み出した。
その瞬間、恵子の手が、俺の腕を掴んだ。その指先は、微かに震えていた。
「翔太さん……」
恵子の声は、切羽詰まったような響きを帯びていた。俺が振り返ると、彼女の瞳は、今にも零れ落ちそうなほどの涙で潤んでいた。
「どうしたんだ、恵子」
「翔太さん……朝まで……私を、愛してください……」
恵子の言葉に、俺の心臓が大きく跳ねた。
彼女の瞳は、俺への深い愛と、抑えきれない欲望を訴えかけていた。
俺は迷わず、恵子の手を取り、その身体を抱き寄せた。
「ああ、恵子。お前が望むなら、いくらでも…」
俺たちは無言で、恵子のマンションへと入っていった。
エレベーターに乗り込むと、恵子は俺の胸に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。その身体は、期待と興奮で小刻みに震えている。
カチャリ、と鍵を開ける音が、俺たちの新たな夜の始まりを告げていた。
その頃、杉本浩二の会社でも、一日が終わりを告げていた。
浩二は、自身の秘書である松田裕美と、最後の打ち合わせを終えたところだった。
裕美は40歳。グラマーな体型が、ビジネススーツの下に隠しきれない色香を漂わせている。
恵子の均整の取れたプロポーションとはまた違う、成熟した女性の魅力が、裕美にはあった。
「社長。今日の報告書、これで問題ないでしょうか?」
裕美は、浩二のデスクの前に立ち、書類を差し出した。
その身のこなし一つ一つが、どこか艶めかしかった。
浩二は書類に目を通しながら、時折、裕美の胸元や、しなやかな腰つきに視線を走らせる。
裕美はそれに気づいているのかいないのか、あくまでもビジネスライクな表情を保っていた。
だが、彼女の頬には、微かな赤みが差している。
「ああ、問題ない。ご苦労だった、裕美」
浩二は書類を受け取ると、裕美の指先に触れた。
瞬間、裕美の身体が小さく震える。
その視線が、浩二の瞳と絡み合った。
二人の間に、目に見えない濃密な空気が流れる。誰もいないオフィスに、カチコチと時計の針が進む音だけが響いていた。
「……じゃあ、俺の家に来ないか?」
浩二の低い声が、静かなオフィスに響いた。
裕美の瞳が、一瞬大きく見開かれる。だが、すぐにその瞳は、誘惑に満ちた輝きを宿した。
「はい、浩二さん。」

裕美は、艶やかな笑みを浮かべた。
その笑顔は、昼間のビジネスの顔とは全く違う、女としての表情だった。
浩二は裕美の手を取り、二人は誰もいないオフィスを後にした。
浩二の自宅に着くと、二人はすぐに、互いの欲望を剥き出しにした。
リビングのソファに腰を下ろす間もなく、浩二は裕美を抱きしめ、その唇を貪った。
裕美の口からは、甘い吐息が漏れる。
「んっ……浩二さん……」
裕美の指が、浩二のシャツのボタンに触れ、ゆっくりと外していく。
シャツがはだけると、浩二の鍛えられた胸板が現れる。
裕美はそこに顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
男の汗と香水の混じった匂いが、彼女の鼻腔をくすぐる。浩二は裕美の身体を抱き上げ、寝室へと向かった。
寝室のドアが閉まると、二人の情熱はさらに高まった。
浩二は裕美の服を乱暴に剥ぎ取り、そのグラマーな身体を露わにする。
ブラウスが床に落ち、スカートが足元に滑り落ちた。
裕美は、白いレースのブラジャーとショーツ一枚になる。
豊満な胸が、浩二の視線に晒される。
その乳房の重みに、ブラジャーのレースが食い込んでいるのが、浩二にはたまらなかった。
浩二は、その胸を両手で包み込み、深く吸い込んだ。
肉厚で、弾力のある感触が、浩二の掌に心地よく収まる。
「裕美……お前は、本当に素晴らしい身体をしている」
浩二の言葉に、裕美の身体は熱を帯び、小さく身をよじった。彼女の瞳は、早くも欲望に潤み始めている。
「浩二さん……もっと、感じさせて……」
裕美の言葉に、浩二の理性は完全に吹き飛んだ。
彼は裕美のブラジャーのホックを外し、それを床に投げ捨てた。
解放された豊満な胸が、プルンと揺れる。
乳首は硬く尖り、浩二の視線を誘っていた。
浩二は裕美のショーツにも指をかけた。
するりと下ろしていくと、そこには濃い影がぼんやりと見え、甘い香りが一層強くなる。
湿り気を帯びた秘部が、浩二の視界に広がる。浩二は迷わず、その奥へと深く突き進んだ。
「はぁっ……!」
裕美の甘い悲鳴が、寝室に響き渡る。
ピチャ、ピチャと、肉が絡み合う湿った音が、情熱の激しさを物語っていた。
浩二は裕美の身体を深く貪り、快感を貪る。
裕美もまた、浩二の動きに合わせて腰を揺らし、その快感を全身で受け止めていた。
その表情は、快楽に歪み、目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「んんっ……浩二さん……! もっと……もっと強く……!」
裕美の喘ぎ声が、まるで獣の咆哮のように部屋中に響き渡る。
浩二は彼女の言葉に応えるように、さらに深く、強く突き上げた。
ドスッ、ドスッ、と、互いの身体がぶつかり合う鈍い音が、性欲の極限を表現しているかのようだった。
裕美の足が浩二の腰に絡みつき、その体をさらに密着させる。
彼女の爪が、浩二の背中に食い込み、痛みを伴う快感が、浩二の神経を刺激した。
快感が、脳の奥深くを痺れさせる。快楽の絶頂で、裕美の身体が大きく弓なりにしなり、甘い叫び声を上げた。
「あっ……ああああ……っ!」
裕美の声が、寝室に響き渡る。
その瞬間、彼女の身体が大きく痙攣し、浩二のものを奥へと締め付けた。
内側から湧き上がるような、熱い快感が、浩二の全身を駆け巡る。
浩二もまた、その快感の波に抗えず、裕美の奥で、全てを解放した。
熱い塊が、裕美の身体の奥へと注ぎ込まれていく感触が、浩二の全身を駆け巡る。
裕美の身体は、もうぐったりとして、浩二の腕の中で安堵の息を吐いていた。
疲労感と、満たされた快感が、二人の身体を支配する。浩二は裕美の隣に横たわり、彼女の髪を撫でた。
裕美は浩二の腕の中で、安堵の息を吐いていた。
「裕美……」
「はい、浩二さん……」
二人の間に言葉は少なかったが、互いの存在が、この秘密の関係を繋ぎ止める確かなものだということを、彼らは知っていた。
それは、ビジネスパートナーという枠を超えた、男と女の本能的な繋がりだった。