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君と歩む道 ~365日のプロポーズ~ 第3章:再会の温もりと、肌に刻む約束

新幹線を降り、東京駅の改札を抜けた俺は、まるで疲れ果てた船乗りが陸地にたどり着いたかのように、ふらつきながら歩いていた。スーツケースを引く腕は、もう限界だった。革靴が床に吸い付くように、重い足取りで改札へと向かう。都会の喧騒が、さらに俺の疲労感を増幅させる。頭の中には、早く家に帰って、温かいシャワーを浴びて、そのままベッドに倒れ込みたいという思いしかなかった。

その瞬間だった。

「康介さん!」

聞き慣れた、少しだけ弾んだ声が、俺の耳に飛び込んできた。その声は、混雑した駅構内のざわめきの中でも、俺の心に真っ直ぐに届いた。俺はハッと顔を上げた。視線の先に、信じられない光景が広がっていた。人混みの中に、見慣れた白いシルエットがあった。一瞬、自分の目が信じられなかった。疲れと睡眠不足で、幻でも見ているのだろうか。

そこに立っていたのは、仕事に行っているはずの里奈だった。彼女は、俺を見つけると、白いコートの裾を翻しながら、俺に向かって駆け寄ってきた。その足取りは、まるで春の陽光を追いかける蝶のようだった。周りの人々が訝しげな視線を向けるのも気にせず、里奈は一直線に俺の元へと駆けてくる。その顔には、満面の笑顔が咲き誇っていた。その笑顔を見た瞬間、俺の全身を覆っていた疲労感が、まるで魔法のように消え去った。俺の心臓は、驚きと喜びで、激しく脈打った。まるで、数ヶ月ぶりに会う恋人のように、いや、それ以上に、俺の心は彼女を求めていたのだと、その時初めて気づいた。

「おかえり♡」

里奈は満面の笑みで、俺に飛びついてきた。ドンッ!と、その小さな体が、俺の胸にすっぽりと収まる。俺の腕の中に、里奈の柔らかな体が心地よく収まった。彼女の髪から漂う甘い香りが、俺の疲れた神経をそっと撫でた。フワリと、彼女の体温が俺の体に伝わってくる。その温かさが、俺の全身にじんわりと染み渡り、冷え切っていた心を温めてくれた。まるで、凍える冬の夜に、暖炉の前に座ったかのような温かさだった。

「どうしたの?なんでいるの?」

俺は驚きを隠せないまま、里奈の肩を抱き寄せた。その肩は、小さく震えている。俺の腕の中で、里奈の体が心地よく収まる。彼女の小さな背中を、俺の指先がゆっくりと撫でる。

「出張、お疲れさま♡」

里奈は、俺の顔を見上げ、照れながら微笑んだ。その瞳は、キラキラと輝いている。俺の顔を覗き込む里奈の瞳は、まるで吸い込まれそうなほどに深く、俺の全てを見透かしているようだった。その瞳の奥には、俺への深い愛情が揺らめいていた。

「え?どういうこと?」

俺は未だ状況が理解できないまま、里奈の顔を覗き込んだ。混乱と、そしてそれ以上に喜びが入り混じった感情が、俺の胸を渦巻いていた。頭の中では、何が起こっているのか、瞬時に理解しようとフル回転していた。

「迎えにきたよ♡」

里奈は、何でもないことのようにあっけらかんと言った。その言葉に、俺の胸がギュッと締め付けられる。まさか、こんなサプライズを用意してくれるなんて。俺は、これまで生きてきた中で、こんなにも誰かに必要とされたことがあるだろうか。そんな感情が、胸いっぱいに広がる。

「今日、仕事じゃないの・・・?」

俺は、もう一度尋ねた。里奈は事務職で、平日は基本的に会社にいるはずだ。俺の質問に、里奈は悪戯っぽく笑みを浮かべた。

「だって、出張でさ、3日間会えなかったから・・・、有給取ったw」

里奈は、そう言って、悪戯っぽく舌をペロッと出した。その仕草に、俺の心臓はキュンと音を立てた。このあざといところが、彼女の魅力の一つだった。全く敵わないと、俺は小さく息を漏らした。この笑顔に、俺はどこまででもついていける気がした。彼女は、俺の想像を遥かに超える、大胆で、そして愛らしい女性だった。

「まじ!?そこまでする?」

俺は、呆れながらも、心の底から嬉しさがこみ上げてきた。まさか、里奈がそこまでしてくれるなんて。全身の疲れが、一瞬で吹き飛んだような感覚だった。体の奥底から、温かい熱が湧き上がってくる。その熱は、俺の全身を駆け巡り、心の隅々まで満たしていく。

「なんでー?いいじゃん♡会いたかったでしょ?」

里奈は、俺の腕に抱きつきながら、上目遣いで尋ねてきた。その真っ直ぐな瞳に、俺は言葉を失う。彼女の甘い声が、俺の耳元で心地よく響く。吐息が、俺の首筋にかかるのがわかる。その吐息が、俺の肌を粟立たせる。

「会いたかったけど…」

俺は、正直な気持ちを伝える。声は、少しだけ掠れていたかもしれない。だが、それ以上に彼女の行動が嬉しかった。彼女の温かい体温が、俺の腕にじんわりと伝わってくる。

「私は寂しかったから…」

里奈は、そう言って、俺の手をぎゅっと握りしめた。彼女の小さな手が、俺の大きな手を包み込む。温かい体温が、俺の指先にじんわりと伝わってきた。そして、俺の顔をじっと見つめる里奈の瞳は、まるで潤んでいるようだった。その瞳の奥には、俺への深い愛情が揺らめいていた。俺は、その瞳から、彼女の寂しさと、そして俺への深い愛情を読み取った。言葉を交わさずとも、俺たちの心が通じ合っていることを、はっきりと感じた。

「ねぇ、お土産買ってきた?」

里奈は、急に話題を変えた。その声には、少し甘えたような響きが含まれていた。まるで、子供がおねだりするような声だ。俺の疲労感は完全に消え去り、里奈の存在が俺の全てを満たしていた。

「買ってきたよ」

俺は、スーツケースを指差しながら答えた。里奈の顔が、さらに明るくなる。

「やったー!じゃぁ、寒いから帰ろっ♡」

里奈は、俺の腕にさらに強く抱きつき、体を擦り寄せてきた。彼女の柔らかな温もりが、俺の全身に広がる。冬の冷たい空気が、まるで嘘のように感じられた。彼女の髪が、俺の頬に触れるたびに、甘い香りが鼻腔をくすぐる。その香りは、俺の心を深く落ち着かせた。

「帰る?じゃぁ、何する?帰って」

俺は、少し意地悪な質問をしてみた。里奈の反応が見たかったのだ。その質問に、里奈の顔は、一瞬で朱に染まった。東京駅の喧騒の中で、二人だけの空間が、甘く、そして熱を帯びていく。

「えー…」

里奈は、一瞬言葉に詰まった。そして、俺の顔を、上目遣いで見上げる。その瞳は、潤んでいて、まるで誘惑しているかのように俺を見つめる。その表情は、まるで熟れた果実のように、俺の男としての欲求を刺激する。俺の理性のタガが、少しずつ緩んでいくのを感じた。

「寂しかったんでしょ?」

俺は、里奈の耳元で囁いた。彼女の耳が、少し赤くなったような気がした。その熱が、俺の頬にも伝わる。彼女の息遣いが、俺の首筋にかかる。

「んー…、じゃぁ、今日はサービスしてあけるね♡」

里奈は、そう言って、俺の腕に顔を埋めた。その声は、熱を帯びていた。サービス……その言葉が、俺の頭の中で響き渡る。まるで、禁断の果実を目の前に差し出されたかのような感覚だった。俺の胸の内側で、ドクンドクンと激しく脈打つ鼓動が、俺の理性を揺さぶる。里奈の柔らかな胸が、俺の腕に押し当てられているのが、はっきりと感じられた。彼女の髪の毛が、俺の首筋をくすぐり、全身にゾクゾクとした快感が走る。

「里奈、一人でしてた?」

俺は、さらに意地悪な質問を重ねた。すると、里奈は俺の腕から顔を離し、真っ赤な顔で俺を睨んだ。その視線は、まるで熱い炎のように俺を射抜いた。

「知らないw」

そう言って、再び俺の腕に抱きつきながら、はにかんだ。彼女の鼓動が、俺の腕に伝わってくる。それは、俺の鼓動と共鳴しているようだった。俺の理性の箍が、完全に外れる寸前だった。里奈の柔らかな体温が、俺の体を包み込み、俺の全ての感覚を麻痺させていく。

俺は、里奈の頭をポンポンと優しく撫でてあげた。彼女の髪は柔らかく、指の間を滑り落ちていく。その香りが、俺の鼻腔をくすぐる。そして、肌を寄せ合いながら、俺たちは家路へ向かった。東京駅の喧騒の中、俺たちの周りだけが、ゆっくりとした時間の中に溶け込んでいるようだった。周囲の人々のざわめきも、俺たちの耳には届かない。里奈の体温が、俺の全身を温かく包み込み、出張の疲れを忘れさせてくれる。俺の腕の中にある里奈の体が、まるで俺の全てを肯定してくれるようだった。この温かさと、この肌の触れ合いが、ずっと続けばいいと、心の底から願った。俺の心は、里奈への深い愛情と、欲望とで満たされていた。その夜、俺たちは、もう二度と離れたくないと、強く感じていた。そして、二人の間に、これまでの何倍も深い絆が生まれたことを、俺は肌で感じていた。それは、言葉では表現できない、強く、そして甘美な感覚だった。

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